e−たわごと No.024

投稿日 2003/04/07  燃える水
寄稿者 八柳修之
調査リポート 「燃える水」

 アメリカ、イギリスによるフセイン体制打倒のイラク戦争、その背後には石油資源獲得の影がちらつく。石油会社に10年間勤めた者として、今日は少し真面目なお話、アメリカとイラクの石油事情について述べてみたい。もとより、政治的な意図はないことを予めお断りしておく。

 石油の支配は世界経済支配の鍵であると言われて久しい。
さてアメリカはアラスカを含む広大な国土から、石炭、石油、天然ガスなど世界最大のエネルギー生産国である。しかし一方、アメリカはまた世界全体で使われるエネルギーの約25%を使う世界最大の消費国であり、かつ最大の輸入国でもある。アメリカのエネルギー消費量の約40%は石油である。

 現在、アメリカの原油生産は1日当り、800万バレル(サウジ、ロシアに次ぎ世界3位)であるが、消費は1,900万バレル、差し引き約1,100万バレル、全消費量の57%を海外からの輸入に依存している。
(バレルとは石油の容量を表わす単位で約159リットル、もともと「樽」という意味で、今から140年前、ペンシルバニア州での石油開発時に酒樽を使用したのが始まり)、

 輸入はサウジアラビア(149万バレル)を筆頭にメキシコ、カナダ、ヴェネゼラと続き、輸入の約1/2はOPEC諸国(石油輸出国機構)からのものである。そして、2020年までに輸入量は、一日当り約1,700万バレル、全消費量の65%に上昇するものと見られている。

 一方、世界全体の石油の可採埋蔵量(現在の技術をもって採掘可能な原油の量)は、少しデータは古いが、1998年末で約1兆バレルと推定されている。
この埋蔵量を国別にみると、サウジアラビア(25%)、第2位イラク(11%)、3位、UAE,クウェイト、イラン(各9%)と続き、アメリカは約2%(22.4億バレル)にしか過ぎない。イラクの埋蔵量は2位にとどまっているが、まだ探鉱されていない区域が多く、サウジとの差はもっと少ない、サウジを上回るのではないかと見る向きもある。

 ところで、人々の関心は、この石油があと何年もつかにある。このまま新しい油田の発見がなく、新しい掘削、回収技術の進歩がないとすれば、世界全体の平均可採年数は44年である。アメリカは10年以下、対するイラクは最も長く140年を超える。ただし、イラクは国連制裁で生産量を抑えられているので、実質的にはクウェイト(129年)が世界一である。イラクを含め上位中東5ヵ国の石油埋蔵量は世界の72%を占め、中東は火薬庫といわれる所以である。

 さて、問題のイラクの石油である。16世紀以降、イラクはトルコの支配下にあったが、1888年に石油の堆積が発見されるや、列強の関心を集めるところとなった。1912年、トルコはイギリス、オランダ、ドイツとともにトルコ石油会社を設立し探鉱を開始した。1928年になるとアメリカ資本も参入しイラク石油会社として再編され、国際石油資本による独占体制が確立された。

 第二次世界大戦後、アラブのナショナリズムの台頭とともに、イラクは利権、鉱区の返還を求め、1968年のバース党政権が樹立されるや、1972年、イラクは石油産業を国有化した。この結果、BP, Total, Shell, Exxon, Mobilなどの国際資本は撤退を余儀なくされた。

 イラクは現在、湾岸戦争後、国連による経済制裁のため、石油の輸出は食糧など人道支援物資購入のため原油輸出枠(年間83億ドル)に制限されている。
 しかし、1997年、国連経済制裁解除をにらんで、1995年に33油田、日量600万バレル、(現在は200万バレル程度)、開発費約500億ドルの開発計画を発表した。これに対しアメリカの反対を押し切って、フランス、ロシア、中国をはじめとする国策会社が油田開発計画に調印ないし仮契約している。
 仏ロ中が武力行使に賛成しなかった理由、フセイン後の体制が気になるのもうなづける。これ以上書くと「たわごと」の範囲を逸脱するのでここまでに。
 (4・7 米英軍バクダット、大統領宮殿占拠の日  八柳 修之)

     
参考資料:
 http://www.eia.doe.gov/emeu/cabs/usa.html
 http://www.eia.doe.gov/emeu/cabs/iraqfull.html
 OPEC: Annual Statistical Bulletin. 1998
 http://www.tepco.co.jp
 International Petroleum Encyclopedia, 2002

 

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