e−たわごと No.056

投稿日 2003/08/19  遠い太鼓
寄稿者 八柳修之


 
 タイトルは村上春樹の小説のパクリである。だが内容はほど遠いものである。
夕食後、夜景を見ようとベランダに出ると、早くも秋の訪れを感じさせる虫の音が聞こえて来た。それとともに何処か遠くから風に乗って太鼓の音も聞こえて来た。テレツクテン、テレツクテン・・・秋祭りの練習であろう。どこでも聞かれる単純にして軽快なリズムである。

 しつこいようだがまた「さんさ踊り」の続き話しである。
盛岡市観光協会のホームページを通して聞いた「さんさ踊りの」太鼓のリズムは、子供の頃、聞いた拍子、単純な音ではなかった。
 田口さんに尋ねると太鼓の音は「ダンコンダラスコダンカトカト」6拍子のリズム、囃子詞は「ヤコラーチョイワヤッセー」だという。6拍子のリズムと、言われて何度も口ずさんでみたのだがどうも違うようだ。
 遠い記憶の太鼓のリズムは「ドドンコドン」である。自分が音痴で音の記憶が曖昧であることを棚に上げて、これも勝手に観光協会あたりが、アレンジしてしまったのかと勘繰ってしまう。

 九戸郡大野村に古くから伝わる盆踊り「なにやどやら」を大野村のホームページを開いて聞いて見ると、太鼓の拍子は「ドンドンコ、ド」という単純な音、私の記憶に近いさんさ踊りの太鼓のリズムそのものである。
 それにしても「なにやどやら」という囃子詞の意味はなんだろうか。前回「たわごと」で疑問を投げかけたが、知っている方はおられなかったし、私も調べたが解らなかった。そこで、勝手に推理するしかない。

 九戸郡大野村は元南部藩の所領である。度々、今年のように冷夏による凶作に見舞われたことだろう。年貢の取立ては厳しかったが、農民には一揆を起こすほどのエネルギーさえなかった。農民はお盆に死者の霊を弔う盆踊りとともに「なにやどやら」(一体、なにがどうなっているのだろうか)と囃したのではないか。盆踊りではあるが、藩に対するささやかの反抗、どうにもならない農民の気持ちの囃子詞ではなかったかと考えられないか、と思うのである。
 
 そして、「ドンドンコ、ド」のリズムであるが、「テレツクテン」という普遍的なリズム同様、単純なリズムであったろう。農民達には複雑なリズムを奏でる練習時間さえなかった。生活が安定し余裕ができるとリズムも変わっていったとみるべきであろう。
 子供の頃の遠い記憶の太鼓のリズムは「ドドンコドン」、近郷近在集落の農民達の太鼓を叩く音だった。あれから50年、それが、「ダンコンダラスコダンカトカト」に変わるのは時の流れ、当然のことであろう。
 真夏の夜ならぬ、冷夏の夜、そんなことを考えている閑人である。
(8・19 八柳 修之

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