e−たわごと No.066

投稿日 2003/10/06  北海道旅行記
寄稿者 田口絢子

秋が近づくと夫は時刻表片手に落ち着かない。
すでにふるさとを離れて半世紀にもならんとしていてもふるさとが恋しい。
本当はもう真っ白でもいいはずの手帳だが、それでもまだなにかしらスケジュールが入ってるのでなかなか日程がとれない。
この春は私の母の介護や息子の開院やでとても旅行どころではなかったけどやっと少し気持ちが落ち着いてきたのか「うさぎおいし・・・」とふるさとの歌ばかり唱う。

出発が決まったのは旅立ちの2日前、まぁいつものことだからアタフタと支度をして(前々日、東京だったからちょっと忙しかった)2日北海道へと飛びたつ。

2日、曇り模様の千歳空港に甥が出迎えてくれた。
千歳から阿寒までの約350qのドライブ、この日は甥の父、つまり夫の長兄の命日でもあって道中は思い出話が尽きない。
途中日高でまずラーメン・・やっぱり北海道で食べるラーメンは美味しい!!
この辺は夏には夕張メロンが道ばたに沢山売っているけどいまはどの店も閉店。
でもトウモロコシがあった!!じゃがバターも・・・・北海道ってどうして美味しいのかしら?

道東は樹木の種類がたくさんあるのでさまざまな色調が細やかに混ざり合う。
ナナカマドとダテカンバが同じぐらいあって赤色と黄色に色づいた広葉樹が緑色の針葉樹に縁取られ一層その色が際だつ。

夫は結婚する前まで道庁の林政課に勤めていたので道内の山は殆ど歩いている。
山のことや木のことは詳しいし北海道の隅々まで知っていて道案内には最高。
そのうえ、甥がハンターなのでこれまた山のことは得意、亡くなったお父さんと冬山に鹿撃ちに行った思い出話が紅葉に目を奪われている私の耳に心地よい。

小雨にけぶる阿寒湖に夕方到着、ホテルは熟年カップルや熟年グループで溢れむんむん。
ちょっとロマンチックな気分には浸れないなぁ〜(というこちらもしっかり熟年。老年?)

3日、予報通り快晴、甥が予約してくれた阿寒カントリークラブへ。
甥は仕事で釧路に2年間いたことがあり度々この阿寒CCでゴルフをしてその都度エゾシカにコース内で遭遇したとのこと、どうしても一度叔父さんとエゾシカのご対面をさせたい・・と今回の北海道行きのメインコースに甥が選んだ。
クラブよりデジカメが大事・・と期待に胸膨らませてスタート、始め丹頂コースでは残念ながらご対面ならず次のまりもコースでは・・と思いながら進んでいくと「イタァー」1匹、2匹、3匹、4匹、5匹、お父さんシカとお母さんシカそしてこどもシカの5匹連れ。
私たちのコースを悠々と横切り隣のコースとの間の林に中でこちらのプレーを観戦するかのようにたたずんで私たちを見ている・・・感動 感動 感動 これはまったく野性のエゾシカ。
それから2ホールぐらいシカと一緒にプレーしたが中にはボールを打っても「フン・下手なスイング」と無視され座って草を食べてるシカもいた。
「ほら、そこにもいるよ」とハンターの甥、さすが一瞬で林の中のシカを見つけ出す。私には目を凝らさないと殆ど林と同じ色で分からない。
あんなにかわいい目をしたシカを撃つなんて・・・私には絶対出来ない。

この夜は、ゴルフボールとシカを追っかけた疲れを川湯温泉で癒す。

4日、夜には雨が降ったが朝はまた快晴、本当にラッキー!!
温泉街を流れるお湯の川を後にしてまずは硫黄山へ、山の麓の紅葉はまるで春のツツジが咲いてるよう。

屈斜路湖を右手に見ながら美幌峠に登る。ここからのパノラマは絶景。晴れていて良かった。
風は強かったけどそんなに寒くない。美幌町は夫が若いときの思いでの地。
町は大きく変貌していても流れる川は同じ、若き日の想い出にしばし浸る夫。
このあたりから夫の歌は「ふるさと」から「幾年ふるさと来てみれば・・・・遊びし友人いまいずこ・・・」と故郷の廃家に変わるもおかしい。

北見を通り留辺蘂・・これをるべしべ・・と一度で読めた人は相当の北海道通。
温根湯・・おんねゆ温泉を通りいよいよ大雪山国立公園へ。
石北峠を越すと目の前に雪をかぶった大雪山が現れ思わず「あぁ〜」と感嘆の声が出た。

層雲峡は思った通り今一番の紅葉。温泉街はまるでヨーロッパのように洒落たたたずまいに変貌してラーメンやも山小屋風ペンションといったところ、随分変わった・・と呟く夫。
温泉街の2世3世の経営者がもっとこの大雪山を多くの人に愛して貰いたいといまはやりの「足つぼの湯」とか花のプロムナードとかゆっくり歩いて楽しむ町ずくりを目指している。
1時間待ち・・ということでロープウエイをあきらめ渓谷へ。
「流星の滝」と「銀河の滝」の二つの滝「双瀑台」では銀座なみの混雑・・・本当の良さはそこから登山道を足で登っていくこと。マイカーの私たちでは多分息切れしてリタイアが目に見えてる。ペアルックの登山姿の熟年夫婦の後ろ姿がなんとも羨ましい。
柱状節理の断崖絶壁が極彩色の屏風絵のよう。この紅葉もあと1週間かしら。

層雲峡を下りふと後ろを振り向くと雪を被った大雪山の峰みねが雲の中に見えた。
子どもたちが小さかった頃甥と一緒にこの大雪の旭日岳で春スキーをしたことはもう遙か遠い想い出。
旭川から道央自動車道を通って姪のいる深川に。歯科医に嫁いでいる姪は大の「おじちゃんっこ」楽しい会話にやっぱり来て良かった・・・と私。全部で900qの行程を運転してくれた甥に感謝。

5日早朝、夫と二人でふるさとの滝川を歩く。小1時間も歩くと町のどこかに想い出がかくれんぼしてて夫は見つけ出す楽しみがあった。
帰る時間が近づいた。ふるさとはもうすっかり昔の面影が消えてしまってたけれど、昔こどもの頃庭にあったというおんこ(イチイ)の木が駅前に植えられていてたわわに赤い実がなっていた。
子どもの頃その実を食べたといつも話してた夫は口にしなかったけど、私はひとつつまんで口に含んだ。
ふるさとの味の微かな甘さと酸っぱさが私の胸に残った。
 

グリーンに向かって走るシカたち

親子5頭づれの3頭

隣のコースとの境目にある木陰で

シルエット

阿寒カントリークラブ

川湯温泉

硫黄山紅葉

硫黄山

美幌峠より屈斜路湖

初冠雪の大雪山

層雲峡「流星の滝」

流星の滝

層雲峡

姪の家

おんこ

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