e−たわごと No.090

投稿日 2004/04/22  ホンモノは素晴らしい
寄稿者 松風緑子

京都には能舞台が流派ごとにいくつかあるし、歌舞伎は南座が
あるので良く観に行ったが 文楽専門劇場はなく(文化会館等で
たまに開催される) 文楽を一度 発祥の地、大阪の文楽座で観
たいと思いつつチャンスがなかった。TVで見たり、文楽人形だけ
博物館で見た事はあるが。

たまたま今年初め 長年の絵の友達で 文楽の話はした事ない
友人に ふっと 「本場で文楽観たいなー」と言ったら 彼女文楽
に詳しく 「良い出し物、良い大夫(たゆう)、良い人形遣いを調
べて連れてってあげる。切符も取ってあげる。文楽座はもう無い。
国立文楽劇場が出来た。文楽は年中いつでもやってるわけでは
ない。1公演20日間位で 年3公演位。 文楽無い日は 文楽鑑
賞教室、邦楽公演、舞踊公演、浄瑠璃の会、研修発表会、大衆
芸能公演等々」 との事。

いつになるかなーと思ってたら以外にも早く、4月19日実現した。
ラッキーな事に 今年は国立になって20周年。昨年11月ユネス
コから 「人形浄瑠璃文楽」が世界無形遺産の宣言を受けたのも
重なって 特別記念公演で 出し物も 古典芸能三大時代物名作
の一つ 「義経千本桜」 だった。
これは歌舞伎で観たことあって あらすじは解ってたが人形浄瑠
璃が生み出した物を 歌舞伎が後追いした事は初めて知った。

今回は通し狂言で 友人は午後の部(16時ー21時)を取ってくれ
午後の部に人間国宝5人の内、四人出た。大夫1人、三味線1人
人形遣い2人。 席は前から四列目の中央。人形も舞台右そでの
大夫、三味線も良く見え最高。
会場は座席の左右、後ろに提灯がずらりと下がって 緞帳は能
衣装の文様から取った格調高い図柄で見事な綴れ織り。
雰囲気最高。

知識の無い私は 人形遣いがメインと思ってたら、大夫だと。
語り物を語るのだから なくてはならないのが大夫で 三味線は
その伴奏。人形が三番目で 大夫の語りで初めて命を入れられ
ると。 首(かしら)も性別、性根、年齢、階級に応じた40種ある
が 特殊な一役首(ひとやくかしら)が30以上あって、原則的に
は決まっているが、大夫の芸風で変える事もあると。 
やっぱし大夫が一番らしい。

そんなに語りが大事なら、と急いで床本(ゆかほん、大夫が高座
で語るに用いる浄瑠璃本) を買ったら 漢字にふりがなが付い
てて意味が解り、床本見ながら、右手の汗タラタラで渋い声で唸
って、、イヤ 語っている大夫を見ながら、舞台(想像してたより大
きくて華やか)の人形と人形遣い観て、沢山登場の時は目をあち
こちに走らせ、忙しく、5時間は長いなーと思ってたのが アッと
いう間の感じで、疲れたけど とっても満足した。

文楽の修業はとても辛くて 後継者不足が問題だと。文楽の心臓
部の義太夫を語る大夫が一番育ち難いと。マイク無しで会場の隅
々までとどく声量だす為、着物の下に腹巻きを巻き、腹式呼吸の
腹筋を支え、お腹に力入れる為、懐に砂袋か石を入れ、上半身の
肩の力抜く為、台座を尻の下に敷き、指先をつま立て、腰、膝に
力を入れる。 一番難しいのは独り言。内緒言を語る時、大きい声
でなくて、しかもちゃんと遠くまでとどかせる事だって。
そしてあの難しい節回しは 師匠が一回語るだけ。を覚えなけれ
ばならず、良い耳と優れた記憶力が必要だと。

それに比べて三味線は耳で聞いて覚えなければならないが、上
手下手は別として 調子合わせて弾く段階まではなんとかなるし、
人形も人形持って動かすのは それなりに格好つく、と。

しかし一番楽そうな人形遣いの修業が 足10年、左10年、シン
10年で最低30年でやっと一人前。その上、昔は三人が黒子だ
ったが 最近は顔を見せるのが評判が良いと シンの人形遣い
だけ顔をみせる。 でも黒子の黒は無の意味で 操る人は 自分
を消失して人形を生かすので、顔に表情を出さず、すべての感情
を人形に移入するのは 人形を動かす技術の上に更に修業が必
要な訳で 修業する前に この気の遠くなるような話を聞いただけ
で、今の若者は挫折するよね。

初めてなのに、最高のホンモノを鑑賞出来て、友人達(3人で行
った)から色々話しを聞いて、今まで全く知らない世界だったので
本当に良い体験をし、いまだに感激の余韻に包まれている。
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