e−たわごと No.113

投稿日 2004/10/26  それぞれのお宝
寄稿者 八柳修之


東京12チャンネル、火曜の夜、「なんでも鑑定団」という番組がある。

本物ではないかと期待を寄せると偽物、嫌々もらったものが意外な値が付いたり、悲喜こもごもである。「なにもお宝など持っていない人が見たってしょうがないのに」と言われても見ている。

ブエノスアイレス駐在時代、お付き合いしていた人にSさんという人がいた。

あるとき、Sさんから「藤田嗣次の猫の絵を見つけましてね。2,000ドルでしたよ。安すぎるから偽物でしょうが、気に入ったので買いましたよ。見に来ませんか」と言われて見に行ったことがあった。

1989年、アルゼンチンは驚くなかれ、年率4,900%ものハイパーインフレであった。経済が疲弊すると、人々は書画、骨董、家具類を手放すので、市場には思わぬお宝が出回る。藤田嗣次は一時、ブエノスアイレスで放浪生活をしたことがあったので、Sさんは、ひょっとしたら本物かと思ったかもしれない。

だが偽物でも気に入った絵ならば、それはそれでいい。Sさんは、92年米銀に転職され、それ以来お会いしていない。


 

「お宝になりますよ」といわれ買ったものがある。たかが買値は10ドルのコインである。1973年11月から約1か月に亘って、アフリカへ出張したことがあった。ご一緒したお役人のKさんは、勲章やコインの収集が趣味で、休日になると危険を顧みず青空市場を歩き回った。私も嫌いでないのでご一緒した。

エチオピアのアジスアベバのマーケットで、マリア・テレジアの(在位1740〜80年、オーストリアの女帝)コインを見つけて、「これは滅多にない掘り出し物だ。10ドルは安い」と、勧められて買ったコインである。なるほど、直径4センチの銀貨、ずっしりと重い。

だが、最近、コインショップで見てもらったら、保存状態が悪く1,000円程度の代物と分かった。Kさんに一言いいたいのだが、高齢のため、もう今は外出はままならぬという。



 

台風のため飛行機が上海に引き返すというハプニングもあったが、ヒマラヤのトレッキングからTさんが無事帰って来た。ヒマラヤトレッキングはTさんの長年の念願であった。最高到達点はエベレストを眼前に望む、高度3,880mにあるホテル・エベレスト・ビューである。エベレスト・ビューには一気に飛行機でも行けるが、カトマンズから8日間かけて、テントでのキャンプ生活をしながら、山を登ったり下ったりして到達したのであった。

もらったお土産の中に、白い筋が入った黒い石ころがあった。3,880m地点で拾った石であるという。何の石か分からないが、石の大きさの割には重い。太陽光線の当たり具合によってわずかに光る。

Tさんによると、「ヒマラヤ山脈は昔、海の底にあった」と聞いたという。

ヒマラヤ造山活動によって出来た変成岩、光るのは雲母が混じっているからであろう。

いろいろあるネパールのお土産より、汗の結晶が光るこの石、この偉業を化体したいわばお宝のおすそ分けであった。飾っておきましょう。
(10・26 八柳)

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