e−たわごと No.137

投稿日 2005/05/13  ふたたび「ビスタリ」
寄稿者 八柳修之

JR西日本の列車脱線事故で、ダイヤの過密が問題になっている。「90秒の遅れ」に海外の鉄道関係者が関心を寄せているという朝日の記事があった。
欧米では、この程度の遅れは「時間通り」と見られているからである。
「列車の遅れと認めるのは、最終駅到着が5分遅れたとき」(NY交通局)、「列車の遅れとは3分以上のこと、90秒程度では客から苦情を受けたこともない」(独エスバーン・ベルリン社)、「短距離の列車では、ラッシュアワーで4分を超えたら『遅れ』とみなす」(英・バージン・トレインズ)、「列車の遅れは日常的、オーバーランも多く、ホームの外れに止まった列車に乗客が走り寄る光景も珍しくない。5分から15分程度の遅れは乗客も認めていると思う」(伊・トレンイタリア)
各国の感覚の違い、国民性や文化の違いが、現れていて興味深い。5分、10分の列車の遅れは、世界の国々では当たり前、むしろ「遅れ」ではなく「定時」と見做されているのだ。

日本の鉄道の定時運行は世界に誇れるものである。定時運行=真面目=日本人の国民性によるものとも、世界には受け止められていると思う。
日本の近代化、資本主義の発展とともに、物流、輸送量が飛躍的に増加し、とりわけ国鉄には輸送力増強体制の確立が求められた。少ない設備投資で稼働率を上げるには、どうすればよいか。結論は明らか、極限まで追求すれば過密ダイヤとなるのは当然の帰結である。
われわれの日常生活のなかで、鉄道は正確という感覚が知らず知らずのうちに身についてしまっていた。そしてそれが、社会のテンポとなってしまった。
5分、10分の『遅れ』にイライラを感じるような人間、いや遅れを許さない社会になってしまっていたのではないだろうか。・・・もっともこんな事が言えるのは、リタイアした人間だからかもしれないが・・・

 

南米のスイス バリロッチェ(絵葉書)

最後に、アルゼンチンのジョークを披露して、たわごとを終りにします。
ブエノスアイレスのセンターにレティロという大きな駅がある。アンデス山脈の西斜面にあるバリロッチェ(南米のスイスともいわれる保養地、ブエノスアイレスから約1,500キロ)との間に1日1便の列車がある。3〜4時間はおろか酷いときは半日も遅れることもある。だから迎えに行くときは、飛行機と同じように駅に確認してから行く必要がある。
だが、今日は珍しく、列車が定刻に入って来た。
「アルゼンチンだってやれば出きるじゃないか」と日本人が言った。
すると、駅員は「旦那、昨日到着する予定の列車でがす」

(三戸祐子「定刻発車」(新潮文庫)は人とシステムの関係について論じている)
(5・13 八柳)

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