e−たわごと No.143

投稿日 2005/07/08  いい言葉
寄稿者 八柳修之

盛岡弁で一番いい言葉を一つ挙げろと言われたら、あなたならどんな言葉を挙げるしょうか。盛岡出身のXさんは「おもさげながんす」だという。
大学を出てから、かれこれ43年、一年に一回帰るかどうかの都会暮らしのXさんは、いつも手帳に浅田次郎の「壬生義士伝」のあの一節、「東に遠く早池峰山。南に南昌山、東根山に雲がねえのは、明日も晴れるしるしだ。西の岩手山、北の姫神山。ぐるりを高い山々に囲まれて、城下を流れる中津川は桜馬場のすぐ下で、北上川さ合わさる。こんたな絵に描いたような城下に生まれ育ったわしは、貧乏なぞ口にしちゃならぬと思った」のコッピーを手帳に忍ばせている。
小説には盛岡弁が随所に出てくるが、なかでも「おもさげながんす」という言葉が頻繁に使われている。
「おもさげがんす」は直訳すれば「申し訳ありません」であるが、状況によっては「有難うございます」という意味もあり、いい言葉と私も思う。
話は飛ぶが、朝日の夕刊に三谷幸喜の「ありふれた生活」というエッセイが時折、掲載されている。エスプリが利いいて面白く愛読している。奥さんは女優の小林さとみも個性派女優である。
7月6日の夕刊に、奥さんの秋田の親戚を訪ね、初めて触れる生の東北弁のことについて書いてあった。「普通に喋っていても怒っているように聞こえる博多弁(三谷の出身)に対して、東北の人たちは、まるで囁くように話すのが特徴だ。怒っていても謝っているようにしか聞こえないのではないか、と心配になるくらい穏やかだ。

頻繁に耳にする「まんず、すかたねえことで」というフレーズは、たいてい英語で言うところの「
Thank you very much」の意味。「すかたね」が「Thank you」で、「まんず」が「very much」。半日、秋田の人々と一緒にいただけで、何度この言葉を耳にしたことだろうか。本当に礼儀正しい皆さん」・・・
この後、面白い話は続くのだが、それは新聞を読んでもらうことにして、「まんず、すかたねえことで」が、なぜ秋田では「
Thank you very much」の意味なのか、関心があった。私流に解釈すれば、「まあまあ しかたがないことですが」である。

6日の夜、Xさんや盛岡出身の友達との飲み会があったので、このことを話題にしてみた。皆さんの解釈も私と同じであった。秋田市に転勤で生活したことがあるXさんは、あるいは状況によりが、「有難うございます」という意味にもなるかもしれないと言った。
帰宅してからも気になったので、秋田の友達にご機嫌伺いも兼ねて久し振りに電話してみた。だが秋田市では使わないし、聞いたことがないという。もっとも自分は、大学を出て40年以上も故郷を離れ、最近Uターンした人間であるから、そのうち女房の里の角館に聞いてみるという。「おもさげながんす」である。
翌朝、早くも電話があった。「すかたねえことで」には、『すまないねぇ』という意味もあり、年寄りの間ではまだ使われている」とのことであった。とすれば「有難うございます」の意味もある。

盛岡弁の「おもさげながんす」と秋田弁の「すかたねえことで」も「有難うございます」というニュアンスでは同じものであると私は思う。だが、私には「おもさがながんす」の方がいい感じに受け取られる。
何気なく自然にでる「有難う」はいい言葉です。どんな国を旅行したのときでも、まず、現地語で「有難う」という言葉を覚えることで、心を通い合わせることができる。「三谷幸喜さ〜ん、一度、盛岡さ、おでんせ」。
(7月8日 八柳)

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