e−たわごと No.181

投稿日 2006/04/01  偶然の出会い
寄稿者 八柳修之

「たわごと」に竹生さんが、附属の同級生との偶然の出会いを書いておられた。
私にも同級生との偶然の出会ったことがあった。欣ちゃんと荒川さん、いずれも地下鉄銀座線渋谷駅であった。あまり話しはしなかったと記憶している。
小檜山 博という作家が、朝日のコラムに書いた「こころの風景〜長く待ったことで」を読んで思い出した、もう一つの偶然の出会いでがある。
以下は、まず小桧山の小文の要約。

『27歳で東京に住んでいた。ある日、新宿の「田園」という喫茶店で女と待ち合わせた。知り合ったばかりの女だった。自分から誘ったのだ。勤め先から給料の前借をして床屋へ行き、約束の6時に喫茶店で待った。しかし、6時半になっても女は現れない。7時になっても来ない。苛立ちを抑えて待った。9時になったとき、僕は喫茶店を出た。女は最初から会う気などなかったのだ、と思った。自分の馬鹿さに腹が立ち、焼鳥屋で焼け酒を呷った。いきなり思い出した。喫茶店は「田園」ではなくて「上高地」ではなかったかと、「上高地」へ走った。腕時計は10時を廻っていた。息を切らして飛び込むと、女はいた。私を見ると慌てて涙眼をぬぐった。その女はいまの僕の妻だ。
いまなら、携帯で連絡すれば何のことなかったろうが、結婚しなかったかもしれない』(05年11月16日付、朝日夕刊 小檜山 博「こころの風景〜長く待ったことで」作者は直木賞・芥川賞候補作家、昭和12年生れ)

次は小桧山風に
『23歳で初めてデートの約束をした。新宿駅西口で待ち合わせをし、映画に行く予定であった。約束の時間を2時間過ぎても女は来なかった。振られたと思って男は帰った。もう顔を会わせたくなかった。再び女を見かけたとき、女は他の学生と歩いていた。男はやっぱり振られたと思った。
男は29歳になっていた。通勤の途中、偶然、地下鉄渋谷駅で女に出っくわした。数分話をした。女はあのとき1時間も待っていたと言った。待った場所は東口だったという。女はまだ結婚していないとも言った。男の気持ちがちょっと動いたが、二度と会うこともなく、いまの妻と結婚した。こんな話しを書けるのは、男がもう68歳にもなったからだ。女も66歳になった筈だ。もうどこで何回会おうとも誰かわからない』
(4・1 八柳)

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