e−たわごと No.290

投稿日 2006/07/21  小笠原靖幸さんを偲んで
寄稿者 田口絢子

7月20日 急逝された小笠原靖幸さんを偲んで、
付属中学校卒業文集「たわごと」より転載します。
 


 題名 「回 顧」 小笠原靖行

中学々々といっても今の中学校は、戦前の中学校とは段違いである。第一にその根本精神から違ってる。つい七、八年前までは五年制の中学でしかも義務教育ではなく試験制度でしたが、今は、昔の中学校が二分したような形で、始めの三年間は義務教育、あとの二年と、それにプラスの一年で高等学校である。なにやら戦後はややっこしくなったが、結極は、第一の難問が三年間伸びたということになる(小生がはたしてその門を通り得るかどうか怪しいものであるが)

しかし今の中学校は、昔のそれと違って、それほど厳格ではなく、さらにその生活というものは、小学校を少し広めたようなものである。これなら小学校が九年と同じじゃないかと言われるむきもあるが、やはり三年上なだけあって、ちっとは物をよけい知ってるようだ(とは言っても、そんなに、威張れる身分じゃないが・・・)

しかし、これまで十五年の内で、この三年間ほど、愉快に過ごしたことはない。これなんかも教育制度の改革によるところが大きいと思う。まだ小学生気分のぬけきらぬ内にうちに入ってしまった中学校ではあったが、今思い返せば、良くもあれほど、のんきに暮らせたものだと我ながら感心せずにはおられない。こののんきな気分が自分をよく伸ばしてくれたのかもしれないが反面、あんなにのんきにくらしたおかげで人より一歩遅れたような気がしないでもない。しかし小生と同類項のものも少なからずあったと見え、結構、退屈せずにすんだ(もちろん同類項でも、ピンからきりまであるのだが・・・・・)それに戦前の中学校と違って総体がノビノビと出来ているものだから、みんな存分に中学校生活を楽しむことが出来たと思う。小生なんかもその一ページであまりノビノビしすぎたむきもないでもない。

一口に言えば、長いような三年間ではあったけれど実際、今思えば、アッケナイもので、さっき正門から入って、今裏門から出て行くといったように短い三年間であった。

毎日の生活も万事、この調子で、右耳から入って左耳へぬけていったり、いやはや世話のやけたころでしょう。自分でさえこのくらいに感じるのだから先生方には、よけいにはっきりしていると思います。「はつ、道理で、あいつはどこかぬけていると思った」なんて今更言わないで下さい。

入る まではあんなに高い望みをもっていたのに、知らず知らずのうちに、卒業というものも近づいてしまったが、何一つとして、ろくなことをやることも出来ず、自分に対して腹立しくさえ感じる。自分の如き、マヌケをもって大事な学友会の役員にさせるとは、よほど物好きな人もあったものだと思う。案の定、何もせずに終わってしまいそうですが、兎も角も、愉快に中学校の生活を送らせて貰えたのは、本当に、有り難いことです。小生程、愉快に暮らしたものがないだろうとは言いませんが、兎も角に一生忘れ得ないことだけは、たしかだとお釈迦様からのお達しでした。

ノンキに過ごしてしまった中学校の生活ではありましたが、ここにその良さが有り、それこそ昔の中学校では、味わうことが出来ない楽しいものを感じることが出来たと思う。
年が増すにつれて体力が向上するように、人間の考え方も進んでいくものである。
面白いのは、自分の将来という事が六年生の頃と今とでは、比べものにならないということである。といっても、これから三,四年たってからもう一度ふり返ってみたら今の望みというものが、ほんとうに、おかしいものに見えると思う。例えば、小学生の頃は総理大臣等と出来もしない様な事を、よろこんでいたとしても、今はもう二,三段格が落ちてせいぜい大学を出て、司法官なり何なりになれば充分だと思っている、とこう言った具合である。こんなところにも、おもしろい面がひそんでいる。

あれこれと思い出せば、尽きることのない話ではあるが、一番強く感じる事と言えば、何と言っても「民主主義時代の中学校に入れてよかった」ということである。
もしこれが戦前の(昔の)中学校であったなら、思い出と言っても、こんなノンキなものではなくもっと厳格なものであったろうと思います。あるいは、こんな文章も、みんな漢文で書いておったかもしれません。(むしろその方が、良いかもしれませんが・・・・・・。)
       × × ×
この附属中学校での生活を誇りとして来た我々にとって、これからの生活がほんとうに、我々の附属ダマシイを発揮し得る時であると思う。要するにこれからが大切なのであります。
これまでの幼稚な気分を一掃しなければならない!!何か思い出多き故郷の地を去って、異国に旅立つような気持ちです。

ここまで我々を育て上げて下さった先生方と、そして、我々に、おおいに協力してくれた下級生諸君に対し
Thanks-giving, Thanks-giving!でこの筆を置こうと思います。
(付属中学校卒業文集「たわごと」より転載、原文のまま)

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