e−たわごと No.298

投稿日 2006/08/01  亜国見聞録−1 ピロポ(Piropo)
寄稿者 八柳修之

たわごとにジダンの頭突きの原因となった「汚い言葉の底」にあるものを書いた。内容的にいかがかとは思ったが、「異文化を知れてよかった。続編を期待する」というメールもいただいた。そこで、多少、書きとめておいたものもあるので、豚になって木に登ることにした。
「どんなことでも、メモでよいから書きとめておきなさい」とアドバイスしてくれたのは高濱直子さんであった。このことは後で役立った。

通算5年余の駐在、所詮、外国人には象の足を触れただけであったが、体験、見聞した範囲のことを披露したい。短期滞在者の一日本人中年の男(当時)が観察したアルゼンチン人観にしかすぎないが、逆に日本人には驚き、新鮮に感じられ、客観的にも観察できた。一読すると、好意的でない、悪い面しか捉えていないとの指摘があるかもしれない。しかし、私にとっては第二の故郷というべき所であり、アルゼンチン、ラ米シンパであることを強調しておきたい。
相手の価値観、人生観、世界観を認識し尊重することが、グローバル化のなかで大切なことと思う。前置きが長くなってしまった。

ピロポとは、街の通りすがりの若い女性に対して、「Tia, Buena!(よっ、いい女)」「Ole, guapa !(別嬪さんだ)」「Maciza!(グラマーだ)」など簡単な言葉から、「俺はあなたのような美人を見たことがない」とか、「あなたの服装の趣味は俺の好みにぴったりだ」とか、嬉しがらせ、お世辞ともつかぬ、ひやかしの言葉をかけることである。
もちろん、教養のある紳士はそのようなことはしない。日本人の女性は、年齢より若く見られがちであるから、ナンパされたと思っている駐在員の奥さんもいる。

男たちは、別に女の返事を期待しているわけではない。まあ、ダメもとで声をかけて、うまくナンパできればといいと思っているだけ。十中八、九は無理を承知で声をかけるのは、男としてのエチケット? ・・・ピロポはドン・ファンの故郷、スペインのセビリアから起きたと聞いたが確かではない。

こんなとき、思慮のある女性はピロポを全く無視して歩くのだ。しかし、ほんとは内心悪く思っている筈はないのだ。いや、女の子の方もこうしたピロポを心待ちにしているからだ。年頃になると、こういったピロポをされないと、自分は魅力のない女かと真剣に考え込んでしまうそうだ。だから容姿に自信のない女は、やけに短いスカートを穿き、目立つ恰好をして街を闊歩するわけ。
嘘だと思ったら、こんな女に出っくわしたときの顔を見たまえ。

わが事務所の秘書はセニョーラであるが、年甲斐もなくミニスカート姿でご出勤、フラストレーション解消のためか、昼休み時間、フロリダ通り(銀座のような所)に繰り出しピロポされるのを楽しんでいるらしい。
 

フロリダ通り travel.jp HPより
 
これはN社のKさんから聞いた話であるが、研修で何人かのアルゼンチン人を日本へ連れて行ったときの話しである。アルゼンチンの女性が、せっかく、綺麗な服を着て、めかしこんで会社に出勤しても、日本の男性はピロポしてくれない。私はそんなに魅力のない女なのかと、すっかり落ち込んでしまったそうである。また、逆に、アルゼンチンの男は女性とみれば見境もなく口説くので、すっかり嫌らしい奴らと会社の女性に嫌われたそうである。ピロポは日本ではセクハラになってしまう。

言い寄ってくる男の甘い言葉の中から、どうやって真実を選り分けるのであろうか。南米の男はちゃらんぽらんな、調子のよい男が多いからご用心。巧言令色少仁。
(8・1 八柳)

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