e−たわごと No.328

投稿日 2006/11/22  亜国見聞録―12 陰の実権者
寄稿者 八柳修之

「もしロシア人のことをけなすなら、それはフランス人、スペイン人の悪口を言うならスペイン人」ということわざがある。このことわざ、スペイン人をアルゼンチン人に置き換えればアルゼンチン人にもあてはまる。
私が駐在した頃のアルゼンチンは、ハイパーインフレで経済状態が最悪な時期であった。アルゼンチン人ほど自分の国をけなす国民もいないのではないかと思ったほどである。特に政治のこととなると、悪口しか聞いたことはない。
大統領や経済大臣など世の中を動かしている人の物まねをして、強烈に政治や世相を皮肉るテレビ人気番組があったほどである。日本でも「コントニュースペパー」という漫才グループがあったが、受け入れられずすぐ消えてしまった。

ここで、注意しておきたいことは、アルゼンチン人が時の政治を批判しているとき、外国人が一緒になって批判してはならないということである。外国人が話しの輪に加わって批判しようものなら、逆に強烈な愛国心?をかきたてるようで、一転して逆襲にあってしまうのである。

ところで、なぜ彼等は政治に不満を持っているのであろうか。一般大衆にとっては、自分の描いている世の中、自分の利益の合致する大統領、政府とはほど遠いからだ。一般大衆にとっては、ペロンのように国の金庫が空っぽになろうとも社会福祉、ばらまき行政をする政治家がよい人、よい政府なのである。
これはどこかの国にもいえることではあるが・・・

すべての人々の利益を満たすことは難しい。分配をめぐる紛争はいつの時代にも起こる。持てる者の代表は地主であり、金融業者であり、輸出入業者であり、これは変わらない。しかし、彼等は通常、政治の表舞台に出て来ることはなく、裏で操り政治を動かす陰の実権者である。農場主は一年の大半をヨーロッパで過ごし、金融業はユダヤ系の人が牛耳っている。
彼等は一般大衆と違ってストックがある。この国には相続税(*)がないから、金持ちはいつまでも金持ちである。気に入らない政府ができても、じっと風の変化を待つ。どうしても我慢が出来なくなると、これまでは軍部と結託してクーデーターを起こして来た。軍も一種の政党のようなものと見られてきた。

持てる者はいくつもの人脈、しかも両股をかけた人脈を持っている。持てる者でなくとも、三人の子供がいれば、一人はペロン党、一人はラジカル党に入党させ、そしてもう一人は軍人にする、ということを聞いた。親、兄弟の絆が強いから三人で助け会えば、兄弟のうちの誰かが常に時の政府の恩恵を受けるということになるからという。そんなわけで、人脈のない日系人は子供を医者や弁護士にしたがる。

* アルゼンチンには相続税はないが、理解できない税金に「輸出税」というものがある。最初、輸出振興はあっても輸出税とは何事かと思った。輸出の大部分は第一次産品、穀物、食肉である。この輸出者の実権者は大部分外資であるから、そこから徴収する。所得税はあるが捕捉しがたい。持てる者から手っ取り早く徴税しようというもので、政権が替っても率こそ違え、存続している。
 
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