e−たわごと No.329

投稿日 2006/11/26  亜国見聞録―13 謝らない
寄稿者 八柳修之

アルゼンチン人はちょっと肩が触れたり、出会い頭にぶつかりそうになったりすると「Perdon ペルドン(すみません)」という。それも先に言うから、礼儀正しい国民だと思ってしまう。しかし、肝心なときには絶対に謝らない。

些細なことだが、女中(日本では死語だが・・)、コーヒー茶碗を誤って落として壊してしまったとしよう。そんなとき女中は「セ・カジョ(このコーヒー茶碗が)落ちた」というであろう。我々の感覚から言えば、「私がコーヒー茶碗を落として壊してしまいました。すみません」と言って欲しいところである。
スペイン語の表現では、落としたのは「私」ではなくて、「コーヒー茶碗自身が自分で落ちた」という表現になるのである。
そういう表現ならば、「セ・カジョ・ペルドン」と言って欲しいのだが、ここで、
ペルドンを付け加えると、女中が自らの非を認めたことになり、月々の給金から弁償金を差し引かれたり、あまりこのようなことがあると首にされるからである。

すべからくこの国では、肝心なことは自分が悪いと言って謝ったり、自分の非を認めない。
こういった例は日常生活いたるところでみることができる。紳士淑女ぜんとした人たちも、いったんハンドルを握ると、急に車線を変更して追い抜いたりする運転であるから、車の接触事故が頻繁に起こる。
こんなとき、自分がいかに正しい運転をしているか主張し相手を罵り、決して自分の非を認めない。第三者が見ていて悪い方がどちらか分かるケースでも、ああだこうだと理屈にもならぬ御託をまくしたてる。アルゼンチン人は非を認めるのは負けだという考え方があるようで、あらゆる理屈をこね責任を転嫁しょうとする。野次馬が集まって来ると、それに同調、応援を求めたりする。

ある駐在員が同じようなケースに出っくわし、相手が機関銃のようにまくしたててくるのには驚いたそうである。黙っていれば相手の言い分を認めたことになるから、こんなときは日本語でよいから、こちらもわめくことが大切、弁護士を呼ぶと相手に伝えることであるという。この国では弁護士がはびこる訳だ。

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