e−たわごと No.339

投稿日 2006/12/29  早くこい、こい 『私のお正月』 (2)
   −ラグビー大学選手権―
寄稿者 吉田一彦

 明治が天下を取っていた時代には、よく大阪の近鉄花園ラグビー場に試合を見に家族で行ったものです。
 朝早く、適当な新幹線に飛び乗って、新大阪に着くと、地下鉄で難波まで行って、近鉄に乗り換え、東花園で降り、そこから歩いてラグビー場まで7〜8分、何の飾り気もない街を歩くのが実に気持がいい。
 試合が始まる前にラグビー場の食堂に駆け込んで、スタンドで食券を買い学生食堂で食べるようなライスカレーやけつねうどんやラーメンを食べて腹ごしらえをしてスタンドに出ると、大阪のおっつぁん達の独特のスタイルがなかなか味があって、東京にはない親切な心使いも憎いほどである。
 東京のラグビーのメッカ青山の秩父の宮とは大違いです。
 試合が始まれば、重戦車明治が相手を徹底的に蹴散らして、文句なく圧勝。
 バックスタンドの向こうに見える山は生駒山か?そこから吹いてくる花園の風も本当に冷たいが、そんな風なんてちっとも気にならない。
 帰りの御堂筋に向かう近鉄の電車の込みようも半端ではない。
 乗り換えた地下鉄を梅田で降りると、新幹線に乗る前に私には必ずよるところがあります。
 1844年弘化元年創業の日本橋(にっぽんばし、東京は「にほんばし」)に本店がある「た古梅」の北店。
 私の独断と偏見をお許しいただければ、ここの関東煮のおでんは誰が何と言っても日本一でしょう。
 40年ぐらい前に大阪府庁に出張した折に連れて行かれてそれからずっと私には病みつきになっている店です。
 狭い店ですが、背の高い丸いすにちょこんと腰掛けてほおばるおでん。さえずり(ひげ鯨の舌)、ころ(まっこう鯨の皮)から出る出汁が150年以上前からの出汁につぎたされて、他にはない独特の味をだし、実に美味です。
 
 独身の頃、銀座の夜の蝶を追っかけよく通った8丁目の「お多幸」の純関東風の色の濃いおでんと4丁目の「やす幸」の薄味の純関西風のおでんの中間ぐらいで私のもっとも好む味である。
 それにお酒は「黒松白鹿」。ああ、思っただけでもこたえられない。
 そこでじゃんじゃん食べてばんばん飲んで、娘達と明治の試合の批評をああでもない、こうでもないと高い声を出して熱く語りあって・・・・
 
 それから幾日かしてお正月が来ました。
 お正月の料理は、結婚して以来毎年故郷の宮古から食材を取り寄せ、母から教わったやりかたで、女房には一切手をふれさせず宮古風のもの(「煮しめ」、これが一番難しい。「腹子(いくら)の醤油付け」「あわびの塩辛」など)を全部私が作ります。
 
 (ただ、例外が少しだけあります。それは秋田の両親が健在中には毎年送ってもらった「ぶり子のなます」、「はたはたの切りずし」、「はたはたの一本ずし」それと「がっこ」、漬物のことですが、料亭の店に出すために特別に作らせているもので、「いぶりがっこ」のほかに、大根の「なたずけ」、なすの「ふかしなす」、切干大根ととろろこぶとつけたものとか、京都の人にはおこられるかもしれませんが、秋田は、漬物ではもしかすると京都以上でしょう。お酒は親父が一番旨いといって「高清水」の2級酒のみ)
 
 お雑煮も鳥だし、腹子をたっぷり入れ、具の沢山入った宮古風のもの(武士がやせ我慢をして食べる女房の水戸風のねぎだけのお雑煮なんて食べられますか・・・)、お雑煮のもちを付けるものは元旦が胡桃を出汁で延ばしたもの(今年は毎年頼んでいる矢巾の妹が病気のため宮古まで「むいた胡桃」を買いにいけず、私が宮古の餅屋に電話をかけ「切手の貼った封筒」を送って、郵送してもらい・・・今年の胡桃は実に高いものにつきました)、3日は今度は胡麻です。
 さて、問題の2日は我が家ではすり鉢ですって醤油だしで延ばしたとろろを食べます。若い頃は、このとろろをご飯にかけて・・・おかわりは平均して10杯ぐらいしましたが、今は情けないことに3杯がやっと。
 
 いずれにしてもがっちり腹ごしらえをして国立競技場へ。昔は、スタンドに島田や丸髷を結って振袖を着た若い娘さん達も沢山いて華やかでお正月らしかったんですが、今はほとんどいません。でも空気がとても冷たくて、気持までもしゃきっとして、新しい年を肌で感じました。
 国立のスタンドはいつしか超満員。グランドに紫紺のジャージの明治の大型の選手が登場してくると、スタンドでは紫の小旗が波のように振られ、観衆はあちこちで大興奮。
 試合は、明治が相手を全然寄せ付けず、圧勝。
 
 私は、試合の結果に大満足して、まださめやらぬ胸の動悸を冷たい風で冷まして、家族と戦況を夢中で話しながらニーヨンロクの青山通りを渋谷までぶらつき、途中、甘味屋の三原堂(残念なことに数年前に廃業)によって大好きなクリームあんみつを食べて・・・この店のクリームあんみつは東京でも3本指に入るでしょう、それを食べてると後ろのほうからとても甘い話し声がするので振り向くとサングラスをかけた井上陽水が「お汁粉」かクリームあんみつを食べていました。
 この店を出ると、表参道(最近、ロンドンのポンドストリートやニューヨークのフィフスアベニューを凌駕するような街に変わりつつありますが)や骨董通りでウインドウショッピングをして・・・・
 これが8年前まで続いた『私のお正月』でした。
 
 また、こんな日が再び来るように・・・・
 『明治、前へ!!!』 北島老監督に代わって気合を入れなおして、今年も明大ラグビーのサヴァイヴァルを辛抱強く私は待ち続けるでしょう。
(完)

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