e−たわごと No.356

投稿日 2007/01/26  日本百名山(56)
寄稿者 竹生健二

宝剣岳 2,931m (2006年)
 
この年はOさんと登った丹沢山をもって登山シーズン終了と思っていたが、丹沢から帰ってすぐにOさんから次の山行きを空木岳にしたいと提案があった。Oさんの計画では、初日に駒ヶ根から千畳敷経由で駒ケ岳に登ってから宝剣岳に戻り、さらに尾根を南下して檜尾岳避難小屋まで、二日目は熊沢岳、東川岳を経て空木岳の駒峰ヒュッテ泊、三日目に南駒ケ岳を往復してから池山尾根を歩いて駒ヶ根に下山するというもので、全行程二泊三日である。幸い私の勤務先が10月28日から11月5日までの間 秋の九連休なので、この間なら都合が付いた。コース中に営業小屋はないので、二泊とも自炊、寝袋だ。天気予報と相談しながら、初日を10月30日と決め、早朝出発のため前日にOさんが我が家に来て泊まる。Oさんに私の持ち物、特に防寒着と寝袋を審査してもらうと、どれも初冬の登山用としては不合格らしい。昨日あわてて買ってきたタイツはいいとして、ウィンドブレーカーにしても、毛糸のセーターにしても、この季節の3,000m級の高山の無人小屋での宿泊に役に立つかなと首をかしげる。綿でいいから股引をひとつ持って、さらにホッカイロも用意するようにと。
翌30日の月曜日は3:40に起床して、4:15に出発。4:45に調布から中央高速道に入る。双葉で5:50〜6:05はトイレと軽食休憩。伊那谷に入ると太陽が昇って明るくなる。駒ヶ根で高速道路を下りると、そこからバスセンターはすぐだ。1992年7月に家内と駒ヶ岳登山に来たときは、もっと山の中の宿に泊まったような気がする。駐車場に着くと、7:12発の一番バスが丁度出発する。これを見送って車中で朝食。登山の装備を整えて、7:42の二番バスに乗る。駒ヶ根の駅から来るバスは少し遅れて7:49発。途中、紅葉が見られるが、最盛期にはまだ早い。しらび平8:20着。丁度二番のロープウェイが出たところで、20分待つ。谷は正面から朝日に照らされて、くっきりと見える。標高2,616mの千畳敷駅には8分で着く。展望台から見る南アルプスは逆光線の中で浮かび上がる。Oさんが入山届けを書き、調理場の人にルート上の要点、水が入手できるか、最低気温は、小屋の状況など、細かいことを訊くと丁寧に教えてくれる。「平年ならもう雪の季節だが、今日、明日は好天だから、冷え込んでもまずまずで、凍りつくことも無いだろうが、アイゼンは持って行った方がよいだろう。檜尾の水場は渇水の心配があるから、水は持っていくように」と。Oさんは2リットルの水の他、私のリュックからあふれた1リットルも背負う。外に出るとひんやりする。9:20から登山開始。宝剣が正面に聳え立つ。休憩なしで乗越浄土に10:10に着く。写真を撮ってから宝剣山荘へ。Oさんは中岳経由、駒ケ岳(2,956m)まで往復してくると言うので、小生が荷物の番をして空身で行ってもらい、遅くとも12時には戻るようにお願いする。Oさんは小さいザックに食料を少々入れて、10:30に出発。小屋の中は薄暗いが、ストーブが燃えている。小屋の主人と話しをしたり、コーヒーを沸かしてもらって早めの昼食を取ったり、置いてある山の本を読んだりして、時間をつぶす。早く宝剣を越えて、尾根伝いに濁沢大峰(2,724m)、檜尾岳(2,728m)経由、今日の目的地である檜尾避難小屋まで行きたい気持ちで焦る。11:45にOさんが半ば駆け足で下りてくる。一休みしてもらい、宝剣岳に向けて12時に出発。登りは難なく、頂上(2,931m)に12:20着。遅れて一組のご夫婦が来たので、写真を撮ってもらう。12:35に下山。しかし、Oさんは三日分の食料、水、炊事道具、防寒着、寝袋などの重装備のため、傍で見ていても背中の重い荷物で体が振り回されそうだ。一寸疲れが出てきたようなので、もう少しで三ノ沢への分岐という岩場で、Oさんの昼食休みとする。13:50に出発するが、どうやら重い荷物のため動きが急に鈍くなる。三ノ沢分岐に着いたのが14時。まだ太陽は高いが、光線はだいぶ鈍くなってきた。遠くの景色もすっかり霞んできた。Oさんはかなり体力を消耗している。そこで、今晩Oさんが必要とする最小限の水を残して、残りは捨てるが、それでもきつそうだ。標準所要時間はここから濁沢大峰まで1時間、そこから檜尾岳まで1時間半だから、順調に休まずに歩いても、避難小屋は17時を過ぎ、暗くなっている筈だ。私の即断で、これから先の全行程を諦め、極楽平からロープウェイの千畳敷駅まで下ることにする。Oさんは意外とすんなり同意してくれた。水をすべて捨てて極楽平へ。緩やかな下り坂になったので、Oさんは急に元気が出て快適に下る。丁度14:40発のロープウェイに乗れる。接続のバスは臨時便がすぐに出る。山の斜面は今朝と違って、この時間でもまだ紅葉がはっきりとして美しい。駐車場15:25着。登山の装備を解き、バスの中で聞いた「こぶしの湯」へ行き、ゆっくりと温泉につかり、疲れを取る。途中、諏訪のサービスエリアで夕食をとり、横浜の最寄り駅に21:15着。Oさんはここから電車で帰る。
今回は、駒ヶ岳往復をやめる、必要最小限の水に甘んじるなど、早めの決断を欠いたための計画断念で、また私がはたして無人小屋での夜間の寒さに耐えられたかの疑問を残した。
 
 

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