ノンジャンル No.081

投稿日 2006/08/15  李琢玉川柳句集「酔牛」より
寄稿者 斎藤 毅

今年も8月15日が廻ってきました。この日を境に境遇が変わってしまった多くの人々にとっては、生涯忘れることの出来ない日でしょう。
この日に間に合わせるかのように、李琢玉さん(台湾人)の句集「酔牛」が上梓されました。ご本人は原稿を書いたものの亡くなってしまい、全日本川柳協会会長の今川乱魚さんが出版しました。12年程前に孤蓬万里さんが「台湾万葉集」を出されたときは、新聞雑誌で随分紹介され話題になりましたが、今回は一般書店でも見かけませんので、その句集の中から、一部をご紹介します。
( )内は私の感想

 
「おのれ」
白内障今も未来もかすみ出し (もうひとごとではないですね) 
老人性健忘症という逃げ場 (私も---)
文部省唱歌は覚えている痴呆 (昨日今日のことは忘れちゃうんですよ)
困らせる心算じゃないが老いの意地 (許せねーことは許せねー、舐めんじゃねー)
しみじみとわびさびを識る齢となり (中国語では、わび=枯淡、寂寥、古雅、さび=閑寂、幽寂、幽玄、だとか)
生き様は曲げられないと臍を曲げ (あるある)
悟りには所詮無縁と我が悟り (そうなんです)
空から空へとは知りながらさりながら (これが琢玉さんの絶句です。合掌)

「世相」
それ以上言うたらあかん宮仕え (サラリーマン経験者なら分かり過ぎるほど---)
下手な字を枯淡の味というヨイショ (苦笑、困惑、ああしんど)

「この国」
生涯を番狂わせの赤い紙 (私達の年齢層は免れたけれど---)
国語とは昔日本語今シナ語 (親とは台湾語、夫婦間は日本語、子供とは中国語で話さざるを得ない人に我々は何と言える?)
鮮血と涙で綴る台湾史 (加害者はいつでもすぐにもの忘れ)
ペキン語を喋らぬ誓い半世紀 (日中国交回復時に周恩来氏等の通訳をした大連育ちの劉徳有氏は1945年8月に「もう二度と日本語は口にするまい」と心に誓った由)
あっしには関りのねえ国中華 (中華民国ではなく台湾共和国に)

「嘗ての国」
中国にへいへいへいとカミの国 (歯がゆいね しっかりしなよ、と元日本人)
強かったニッポン埒もないニホン (はりこの虎だった日本男児、今は---)
少年の躾お寒い神の国 (林檎が生り、スキーが出来るから寒い国か?)
日本語がすんなり通じないニホン (「どの国の言葉だろうかカタカナ語」という句も)
印象を濾過修正し佳き日本 (実像は?)

琢玉さんは「俳句は主観であり、主観的に自然を謳歌する。川柳は生臭い人事を詠む詩であり、人間味を謳歌する」と仰る。そして「小説は嘘をついてもよいが、川柳は嘘をつかない」とも。「うーむ、其の通り」という句はまだまだ有りますが、成程というのを逐一紹介していたら本一冊になりますので、これ位にします。皆さん、どう感じられましたか?

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