ノンジャンル No.089

投稿日 2006/10/03  『攻防』のサプリメント
寄稿者 隆宮  暁

―摩訶不思議・・・T氏にTOMORROWは来るか?−
 
 長い間このシリーズを読んでいただいて有り難う御座いました。
 このシリーズを書いている間、私は、このテーマはあるいはこのHPに掲載するのにふさわしくないのではないかと何度も心配になりました。
 しかし、とうとう最後まで書き、やっと終えることが出来ました。
 この間じっと我慢して受け入れてくださったHPの管理人の絢子さんには感謝します。
 このシリーズを読んだ後の皆さんのお口当たりはいかがでしたか、まるで不味い洋食を食べさせられたときのような嫌な感じはしませんでしたか?
 私は、責任を感じて、お口直しに前シリーズのY氏同様サプリメントを書くことにしました。
 大体こんなテーマを書いた人は、日本では誰もいません。一度JR出身の事業団時代の私の部下が職務上の立場から企画し、依頼されて原稿に私も目を通しましたが、いつの間にか立ち消えになり、日の目を見ませんでした。どんなプレッシャーがかかったのか、私には分かりません。
 しかし、私が個人的に書くのを、とめる権利は、どなたにもありません。
  
 『攻防異聞』で、附中の卒業時の文集『たわごと』に私が書いた文章を読んでいただけましたか?
 文脈からははっきりしないところがありますが、何でその頃、公務員志望の大それた背景を私が書いたか自分でも不思議でなりません。
 その頃、私は、盛岡の菜園のマル水という水産会社の事務所の二階(私の親父の商売の関係でつながりのあった会社で、会長をしていた山本弥之助先生のご紹介で)に住んでいました。
 毎朝、5時ごろになると、向かいの大きな魚問屋(今は川徳デパートか?)奥さんとおめかけさんが同居している精力的な親父さんの大きな声で目を覚まし、窓を開けると左側に岩手公園(ネイミングが盛岡城跡公園となるそうですね)の春にはぼんぼりにぼーっと霞んだ桜が見えたりして、右側には、すぐ近くに高橋 明さんのお家がありました。
 事務所の用務員さんの若夫婦が作ってくれたほかほかのご飯と市場から持ってきたばかりの魚の塩焼き(その頃は冷凍技術が未熟で盛岡で食べる魚は今のように鮮度がよくなくて、私は閉口しました)の朝ごはんを食べると、御田屋清水と白い壁の塀に囲まれた盛久旅館の横の坂を登り、内丸、絢子さんのお家のある本町、上の橋を渡り、初夏には中津川の青々とした清流に目を楽しませながら、岩山を借景にする加賀野に入り、ネクタイのユニークな制服に身を包んだ憧れの色白の二高のお姉さん達と目が合って思わずぽっと童顔を赤く染め、あわてて下を向いて足を速めるともうそこは附属中学です。
  
 こんな列車にも乗らない、ストの影響も受けない(東京では国鉄のスト権ストの頃には、線路の上を何時間も延々と歩いた)のんびりと牧歌的な毎日を過ごしていた私が何でストのことを恐ろしいと考えていたのでしょうか?
 確かにその頃―昭和27年の4月には、日本で初めての政治ストや5月には血のメーデー事件がありました。
 
 しかし、当時は、テレビなんかなかったし、私はラジオも聞きませんし、あまり新聞も読まない。どんなルートで私の頭にそんな大それた知識がインプットされたのか不思議でしょうがありません。
 それにその頃は、私も溢れるほど多情多感で、将来やりたいことは一つに絞るのに困惑するほど沢山ありました。
 弁護士、検事、役人、外交官、商社マン・・・・・そしてこんなことを書いては何ですが―――一  一高を卒業し、上京すると、有楽町の日劇ミュージックホールを見て、これまでブロンズ色にたくましく日焼けした宮古の女性しか見たことのない私は(この世にこんな綺麗な生きた人形がいるのかと1メートルも飛び上がり)吃驚しました。
一時代を風靡したヌードスターのジプシーローズ、奈良あけみ、メリー松原、アンジェラ浅岡、伊吹マリ、岬マコ、それに真っ白いパールのような輝く肌と謎のチャーミングな笑顔を覗かせる舞姫、小浜奈々子、いやはや私は彼女らと踊れる相方のダンサーになりたいという希望まで加わって・・・・・・本当の話です。
 
 それに、希望の大学を受験して見事に失敗し、いらいらしていた私は(皆この世代の失敗は、前のサプリメントで書いた宮古の青い後光のさしたデビルの悪戯です)、その頃は横浜に住んでいましたから、入学金が半分の横浜市立大学の医学部を受験しようとしましたが、一高で化学をとっていなかったので、受験できませんでした。理科で化学を専攻していたら今頃は、ギネグレッペの医者になっていたかもね――――
 しかし、この大学病院は、2〜3年前に医療ミスを2回ほどやって、私のR省で1級先輩の藤井さんという女性(東大卒、お父上は、建設事務次官。ご主人は、同じポストで、最後の役所出身の道路公団総裁として一躍有名になった(?)ご存知藤井総裁)が横浜市の助役をやっていて、テレビに出ては何度も頭を下げるのを見ました。
 全く気の毒で、見ていられませんでしたが、不思議な縁ですね。
 
 さらに私は、この頃、多少やけくそになっていて、日大の芸術学部を受験しようとしましたが、一緒に住んでいたおばさんに強く反対されて、受験しませんでしたが、受験していれば今頃は、映画の大監督?になっていたかもしれませんね。
 このようにやりたいことは一杯ありましたが、今目指している小説家になりたいという希望は、ほんの一瞬(?)しかありませんでした。
 一瞬というのは、石原慎太郎が『太陽の季節』で芥川賞をもらったときに、今でも私は鮮明に覚えていますが、一高の3年生で、今の前の前の校舎の二階の図書館に駆け込んで、『太陽の季節』が掲載されている『文学界』をむさぼり読んで、ああ、この程度の小説なら私もかけると思って、宮古の例のデビルのことをテーマに書こうと思って書き出しましたが、原稿用紙のマス目の1ページも埋めることはできませんでした。それで小説家になることは、その場ですぐに諦めました。
  
 私は、当時大学への進学のことしか頭になくて、皆さんがいいところに進学するのを風の便りに聞いて、すごくあせり、まさに「Stray Sheep」となって、 沢山のなりたい目標の中に埋没し、迷い、あちこちを徘徊して、やがて附中の文集に書いてあった仕事にやっとのことでたどりついて目標の仕事が出来たんだから摩訶不思議ですね。
 それもこれも、もしかしたらあのデビルが私のためを思って、仕掛けをしてくれたのかも知れませんね・・・・(最後まで黙って私についてきてくれれば、私は、皆さんが吃驚するようなひとかどの人間になっていたでしょう!!!)

―――それから50年余りもたって、今は、小説家に挑戦。
 私は、小説は、ほとんど読んだことがなく、これまで自己流で書いてきましたが、最近なんかいやに気になって、今世界有数の英国のブックメーカー(賭け屋)がノーベル文学賞受賞候補者と予想している村上春樹のある作品を読んでみました。
 情景描写がきめ細かく立体的で、性的描写にいたっては、私が思わず赤面するようなストレートな表現を多用しているこの作家の作法に私は驚きました。
 この人の書いたものが世界的な評価を受けるほどの本当の小説なら私が書いたもの(誰も私が書いたものを読んだことがないので、比較のしようがないと思いますが)は、なんなんでしょうか?
 私は、自信を喪失して、傷心のうちに、再び原点に戻り、勉強しなおすことにしました。
 特に、人間改造、中でもナイーブな感受性などの形而下の変革をしなければ、いいものは書けないことに気がつきました(はたしてこの年で人間の改造が出来るでしょうか?)
 それにしても若いうちは私もとても理解できなかったけど、芥川でも、太宰でも、三島や川端の高名な作家でも自殺するほど悩み落ち込むのですから・・・・・・
 私は、まだまだそれほど深刻ではありませんが、結構それなりの悩みがあって、何でこんな世界に無謀にも飛び込んだのか、時に後悔することもあります。
 でもそんなときに、私を慰め、励ましてくれるものを私は見つけました。
 それは、絢子さんにいただいた一枚のジャズの CDから火がついて、最近大いにはまりまくっているジャズです。
 これを聞いて、心を癒し、夢のような途方もない仕事に挑戦しているんですよ。昔の人はいい事を言ったものですね。
『持つべきものは友』と
 私が今好んで聞いている曲は、いろいろ―――です。


Curtis Fuller  (Blues Ette)
前にも『盛岡発』で書きましたが、北上川の「舟っこ流し」とベストマッチの「ニューヨークのため息」ならぬ「北上川のため息」With ブラウニーの・・・・・・・ そのときの歌は?  確か「Yesterdays」だったと思います。


Helen Merrill(Helen Merrill)

もう一度ニューヨークに行って、今度はブロードウエイで最後まで眠っていたミュージカルではなく、上等のお酒でも飲みながらファンキーな、ソールなジャズのライブを聞きたいものですね・・・・・・

Bill Evans  (Walts for Debby)
            (Portrit in Jazz)

ギターの名手Jim Hallとのインタープレイ
            (Undercurrent)

Kenny Burrell (Midnight Blue)

Miles Davis   (Kind of  Blue)
              (Cookin)
Sonny Rollins (Saxophone Colossus )
                       (St.Thomas)
John Coltrane (Ballads)

   ソプラノ・サックスの  (My Favorite Things)
バリトン・サックスの
Gerry Mulligan (Night Lights)
Cannonball  Adderley (Somethn Eles)
Grover Washington Jr (Wine Light)
Paul Chambers         (Bass On  Top)

Kenny Dorham (Quiet Kenny)

Dexter Gordon                (Go)

ギターの
Grant  Green              (Idle Moments)

Chick Corea                (Return to Forever)

Chet Baker    (Sings)

オルガンもはいった
Lou Donaldson             (The Natural Soul)

スペインのロドリーゴの「アランフエス協奏曲」の
Miles Davis               (Sketches of Spain) と
Jim Hall  (Concierto de Aranjuez)
Art Blakey               (A Night at Birdland.Vol 1)
           (Moanin)

Eric Dolphy              (Eric Dolphy at the Five Spot.Vol.1)

Clifford Brown           (In Concert)

Art Pepper (Meets The Rhythm Section)

Paul Desmond (First Place Again)
MJQ          (Django

Bud Powell   (The Scene Changes)

Herbie Hancock(Maiden Voyage)

Weather Report (Heavy Weather)

Thelonious Monk(Thelonious Himself)

Keith Jarrett  (The Melody At Night)



 ジャズのお好きなお方なら一目でお分かりだと思いますが、これらのCDは、ほとんど初心者用の入門者向けのCDですね。
 ジャズがご趣味の先輩がおられたら是非ご教示下さい。
 皆さんが学生時代の五十年前にやっていたことを私は、今やっとやっているんですから・・・・・

 こんなことで落第官僚のT氏には、
TOMORROWは本当に来るのでしょうか???

 さて皆さんは、このサプリメントを読んでお口直しになりました?
 
  何! ならない!!!

GOOD BYE
 

『御田屋清水』

『旧盛久旅館』

『岩手公園』
 (田口絢子氏撮影)
 

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