ノンジャンル No.092

投稿日 2007/04/09  ペットあらかると ニャン君
寄稿者 吉田一彦


 猫好きの人には大変申し訳ないが、しばらく我慢して欲しい。
 
 年末に今勤めている会社で、どこからか送られてきた子犬と子猫の写真の入った可愛らしいカレンダーをいただいたが、家族全員(私も含めて)の反対で、これを家の中にかけることが出来なかった。
 どうしてかというと、子犬のほうは大歓迎なのだが、猫の方がいささか抵抗があって駄目だからである。
  
 まだ、役所に勤めている頃にこんなことがあった。
 
 その頃、わが一家は、東京目黒の東山の7階建ての集合官舎に住んでいた(この頃、小川郁司さんもこの近くに住んでいた)。
 先ごろ政府税制調査会の本間会長が住んでいて問題になった官舎よりも少し狭い官舎だが、交通が便利、子弟の教育環境(特に帰国子女の)がいいということで、その官舎には本省の課長以上局長や事務次官も住んでいた(局長以上で黒塗りの公用車が朝迎えに来る人が半数ぐらいいた。私は悔しいけど足でてくてく歩く半分の方)。
 某日日曜日、家族全員で銀座にショッピングに出かけ、2時ごろ竹葉亭の鰻の蒲焼だったか隠れた名物の鯛茶漬けだったかを食べてルンルンした気分で帰宅。
 私は、少し疲れたので自分の部屋でごろ寝。目を覚ましたときには5時を過ぎて、外はもう真っ暗であった。
 気のせいか私の洋服ダンスの上で何かごそごそ動いているようであった。さらに寝ぼけ眼をよく凝らしてみると、丸い二つのものが闇の中で鋭く光っていた。
 私は、吃驚して飛び起きて部屋の電気をつけた。タンスの上を見ると大きな黒い猫がうずくまっているではないか!!私は一瞬身体に寒気が走り、身震いがした。
 私は、妻や娘の部屋に走り、彼女らを呼んできた。
 彼女達も猫を見ると青ざめた。
 「どうしよう。どこから入ったんだろう?ちょっと開けておいた風呂場の格子戸の窓からか?」
 「お父さんすぐに外に追っ払ってよ・・・・・」
 「外に追っ払ってよ、といったって俺も怖いんだから・・・」
 「男でしょ。何とかしてよ」
 女房や娘が言うので、改めて考えてみると、いわれたとおり男は私だけである。仕方なくベランダから竹の長い棒を持ってきて猫を恐る恐る突っついてみても猫はびくともしない。
 「そうだ、いいことがあるわ。猫好きの〇〇ちゃんに頼もう」
 次女が通っている中学校で同じクラスの隣の棟に住んでいる農林省の部長の娘さんを呼びに走った。
 すぐに次女が〇〇ちゃんと一緒に戻ってきた。
 〇〇ちゃんがすぐに台の上に上がって猫を抱こうとしたが、猫は唸り声を上げて〇〇ちゃんの手に噛み付いた。少し血が滲んだ。
 「危ないから止めなさい」
 私が〇〇ちゃんに言うとさすがに猫好きの彼女も恐怖感を感じているのか、すぐに台から降りた。
(困ったなあ!それじゃ私もいよいよ清水の舞台から飛び降りる覚悟でこの竹の棒で猫と戦争をおっぱじめるか)と思った矢先に玄関のほうで妻が誰かと大きな声で話しているのが聞こえてきた。
「中に入ってみてください」
そんな妻の声がして私と同じぐらいの年配の男性と高校生ぐらいの息子らしい若い男性の二人が突然我が家に入ってきた。
「お父さんこの方達が猫を探しているんだそうです」
確か父親のほうとは、霞ヶ関の役所の合同庁舎でたまに会う、しかも彼には毎朝迎えの黒塗りの車が来る(だとすれば厚生省の局長?)
「あっ!!うちの猫です」
その男性が台に上がって手を伸ばすとさっきとは違って、猫は声も上げずに手の中に滑り込んだ。そしてその男性の胸の中で猫は気持よさそうに目を細めた。
 突然わが女房が怒り出した。
「この宿舎では、規則によって猫は飼ってはいけないことになっているんでしょう。それを貴方はどうして飼っているんですか!!!」
 その男性は、ばつの悪い顔をして女房の問いかけには答えず、そばの息子に向かって怒り出した。
「だからちゃんと見てろって言ってたろう。お前は何をしてたんだ!!」
 息子は、父にしかられて下を向いた。
「なんということですか、貴方は息子さんのせいにして、男の癖に卑怯じゃないですか。ちゃんと謝りなさいよ」
女房がまくし立てた。男性は女房の剣幕に押されて・・・
男性と息子が深々と女房に向かって頭を下げて、帰っていった。
 私は、厚生省の局長を叱り飛ばしている女房を見て痛快であった。
「あの人が誰だか知っているのか?あの人は確か厚生省の局長だよ」
「局長だろうと何だろうと・・・」
妻は、ぶつぶつ口の中で呟きながら怒りを冷ましていた。
翌日、その男性は、立派な菓子箱を持って再びわが家に謝りにきた。

猫についてもう一つ。
私の母は、亡くなる直前にしばらく病院に入院していた。私は母を見舞うために、宮古に帰り我が家の玄関のシャッターを開けた。
その家には、今まで母が一人で住んでいて入院後は誰も住んでいない。
 玄関の戸をあけたとたんに2〜3メートル先から黒い物体が顔をめがけてすごい勢いで飛んできた。私は本当に吃驚して反射的に顔を傾けてよけたがもう少し反応が遅かったら顔に当たり大怪我をするところであった。
その物体は、いつどこから入ったのか黒い大きな猫であった。
 善意に解釈すれば、母の留守中に猫が家を守ってくれていて私を外敵か不審なものと考えて、攻撃してくれたのか。
 私は、とても怖くなって家に入らずそのまま東京に戻ろうと考えたが、そうもいかずやっとのことで腹をくくり家の中に入った。
 とにかく私とわが家族は、この2つの事件も重なって益々猫が苦手となり、今もニャン君との関係がとても険悪なのである(ブルブルブル〜〜〜)

(続く)

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