ノンジャンル No.093

投稿日 2007/04/09  ペットあらかると おいぬ様
寄稿者 吉田一彦

 家の近くの駒沢オリンピック公園に行くと、私が見たこともない珍しい犬を連れた人々で賑わっている。たまに有名なタレントが大きな洋犬を散歩させている風景に出会うことも珍しくはない。
 
 
 私は、昨年1年間、順番が回ってきて、今住んでいるマンションの管理組合の理事長を務めた。
 秋には、組合の業務委託をしている三井不動産管理会社の受託しているマンションの理事長対象の研修会が霞ヶ関ビルで開かれたので、私も面白半分に出席してみた。
 私がこの研修会に出て一番知りたかったことは、マンションと犬との関係である。
 私のマンションでは、犬や猫を飼うことは禁止されているが、それでも2,3人の人たちが室内でハイカラな洋犬を飼っている。
たまに廊下で、つれている犬とよく似た顔をした中年のレディーがいかにも高そうな毛のふさふさした耳の長く垂れ下がった小ぶりの洋犬に携帯電話を近づけて
「花子ちゃん、パパからお電話よ」
なんて場面に出くわすと、犬を飼いたくてもじっと我慢をしている私なんかは犬もろとも蹴り上げてやりたい衝動に駆られることもあるが、こんな人達に向かって規則違反を主張することが出来るだろうか?
 この研修会で私が教わった結論は、「ノー」である。
何センチ(忘れたが30センチだったかな)以下の犬であれば、他人に迷惑をかけないかぎりマンションで規則に違反して飼っていてもその人に文句を言えないんだそうである。
 それなら貴方もマンションの部屋の中で犬を飼えるじゃない?よかったわね。
 ところがよくないのである。私が飼いたい犬はそんなおもちゃのような犬ではない。
 私は、小さい頃、厳格な祖父に育てられた。
祖父の口癖は、『勝負事や女には手を出すな』、『生き物は飼うな』などといったことであったが、私はこの家訓をこれまできちんと守って生きてきた。
 このため今でもマージャン、碁、将棋は一切出来ない。犬も飼うことは許されなかったのである。勿論女にも手を出したことはない。
 このためいつも近所の人達が飼っている秋田犬、柴犬、シェパートなどの子犬を遠くから眺めていた。「私も飼いたいな」という気持を持ちながら・・・
 小学6年の頃、知り合いの家に頼んで、警察から預かっていたドーベルマンピンシェルを借りて散歩に出たことがあった。この犬は大型犬で、泥棒を2,3回捕まえた優秀な警察犬で、走っているトラックのタイヤにも噛み付くという獰猛な犬で力も強く、私も綱(リード)を引っ張られて倒れ気絶したことがあった。そのときリードをはなさなかったというのが私の自慢であった。一度この犬に黒い染め粉を塗って品評会に出したこともあった。

 こんな犬についての経験を持つ私がずっと一貫して一番好きな犬は、秋田犬や甲斐犬、北海道犬、柴犬、紀州犬、四国犬などの和犬である。
 岩手犬(岩手マタギ犬)もこの和犬の一つだが今は幻の犬となり、断絶種といわれているそうだが、ある情報によると今でも数匹生きているとか、勿論私もどんな犬か見たこともない。岩手在住の皆さんで見た方はおられるだろうか。
 和犬といえば秋田市の隣のU市に住んでいる私の義理の妹は、この間まで「しろ」という和犬の少し雑種がかった中型の犬を飼っていた。この犬のことは話にはずっと前から聞いていたが私は彼女の亭主の葬儀のときに初めてこの犬を見た。想像してたよりもとても上品な顔立ちをして真っ白い毛の綺麗な犬であった。妹が吹雪の中を散歩させるのはさぞ辛かろうといつも案じていたのだが、私の想像の中では真っ白い雪の中を上等のキャメルの襟巻きで顔を隠した秋田〇〇の彼女がリードを引く「しろ」の散歩姿はいつも一幅の絵になっていた。
 悲しいことに昨年の年もおしせまって、「しろ」は、がん治療のため秋田の病院に通院していた甲斐もなく、幻のかなたに逝ってしまった。
 
 和犬の中でも私が一番好む犬は、勿論秋田犬であるが、この犬は大型犬で、力が強く年寄りの私にはもうその世話は無理だろう。
 私は、若い頃からこの秋田犬を基点としてずっとこんな夢を描き続けていた。
 
 
 いつの日か私は、東京を引き上げ、故郷の宮古に帰ったら、まず、一番最初に秋田の大館に行って血統書つきの秋田犬の子犬を買おう。そして宮古で素晴らしい犬に一生懸命育てよう。
 毎朝早く起きて、犬を連れて岸壁まで魚を釣りに行って、埠頭のアンカーに犬をつないで自由に遊ばせ、フレッシュな太陽が昇ったら市場に飛んで行って食べたい魚や取立ての野菜を買ってそれをおかずにして朝飯をしっかり食べて・・・・
 月に一回は県北バスに乗って盛岡の大学病院に行って、身体のケアーをちゃんとして、私と喜んで付き合ってくれそうな附中時代の友達とあって美味い昼飯を一緒に腹一杯食べて、暇つぶしに好きなことをあれこれおしゃべりをして、日が落ちる頃またバスで宮古街道を帰って・・・・・
 私は、そんなささやかな夢を描いていたのだが、このちっぽけな夢でさえも私が老化した今となってはとても実現しそうもない。
  
 秋田犬といえば有名なのが忠犬ハチ公である。この犬の剥製は上野の国立博物館にあるそうだが、お墓は、青山墓地(青山霊園)の私の義母の墓のすぐそばにある。
 お彼岸には、母のお参りが済むと、私の一家は、主人である東京帝国大学農学部教授上野英三郎氏(自宅は今の東急本店あたりにあったそうです)とともにまつられているハチ公の墓に必ず深々と頭を下げ手を合わせて帰ってくる。
 
 いろいろと回り道をしてくどい話になってしまったが、そんなことからマンション住まいの私には、やはり私の好きなこんな大型ないしは中型の犬を飼うことは出来ないのである。
 ただ、出来ることは年末になると銀座の伊東屋に行って岩合光昭が日本の代表的な和犬を写した「ニッポンの犬」というカレンダーを買って部屋に掲げ、その写真を毎日眺めてはちょっぴり満足していることぐらいである。
(続く)

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